様々な食品工場にご訪問し、常々感じていることは本当の意味での「検証」「内部監査」はどういう仕組みを指すのか、ということである。
食品製造工場における「検証」と「内部監査」に関して、見識を深めるためにISO22000_食品全マネジメントシステム(以下、FSMS)を再確認し、監査(調査)もさることながら、システム構築の援助にも活用してきた。
各事業者においては、「HACCP認証」「ISO9001認証」「ISO22000認証」など取得している認証は様々で、それ故、「検証」と「内部監査」を混同しがちである。食品製造においては、製造工程と作業マニュアル中心の構築となっている傾向がまだまだある。
しかし、そういった作業手順の中にPRPが効果的且つ有効的に組み込まれ作業の一部になっていること、各工程における作業マニュアルや工程記録にOPRPやHACCPプラン(現・ハザードプラン)が組み込まれて、危害やリスク防除を担っていること等、「検証」や「内部監査」を円滑に行うための条件として、日常の作業の中にFSMSが組み込まれた形になっていることが前提であると考えている。
では、実際にはどうようになっているか?
生産・製造作業、洗浄等のPRP、OPRPやCCPの確認および記録、製品検査(出荷判定)などが各部門や部署の多岐に渡っていることから、各部門でのシステムそのものは適正に実施されているものの、各システムのつながりや広い意味での体制が忘れられがちになっているのが事実である。
書籍『ISO22000「食品安全マネジメントシステム」構築のポイント』を参照に自己考察してみると、【各工程や各部門でのシステムに対する検証の集合体がシステム全体の検証であり、その検証結果を解析した上で「PDCAサイクル」を回し、システムや手順・記録の見直しを図っていくことが、いわゆる「内部監査」というものではないか】・・と要約できると考える。
しかし、業務を通じて(製造委託先にご訪問した際などに)よく感じられるのは、各種システム認証に対する「内部監査」、つまり、規格や要求事項に適合しているか、ということに焦点が置かれ、システム構築の元々の大きな目的であった「食品の安全・安心」から遠ざかった形で形骸化されているのではないか、ということである。
”消費者へ正しい商品を届ける”という食品製造・販売の主目的が根幹から離れ、システムや体制・仕組みそのものに注力が置かれた、言い換えればルールを守っているかどうかのチェック機能としての位置づけになっているように考える。
その現状を否定はしないが、“各工程や部署の検証が行われ、決定頻度で内部監査が行われる”という「検証」「内部監査」活動においては、規格適合中心のものでなく、本来の目的に立ち返って「消費者保護」「安全・安心」「正直・信頼」といった観点も念頭において実施されることで、より効果的で有効な改善やシステム見直し・変更が行えると考える。
また、食品製造から販売に至るフードチェーン全体においては、消費者からの苦情や製品撤去・回収がまだまだ多いのが現状である。こういった事象からもより効果的で予防目的の「検証」「監査」活動が今後必要であり、そうすることでFSMSのシステムを本当の意味で有効活用できるようになるのはないか…。